24時間体制で障害者の生活に向き合う障害者支援施設のスタッフ。現場は交替制勤務が基本ですが、夜勤のスタッフはどんな仕事をしているのでしょうか。ここでは、社会福祉法人「ル・プリ」での例をご紹介します。
画像引用元:社会福祉法人ル・プリ(https://le-pli.jp/)
「ル・プリ」は、人と人とのつながりを大切にした対人援助やウェルビーイングの実現に取り組む社会福祉法人です。職員が1 つの大きなチームとなって障害を持つ目の前の方と向き合い、安心できる生活の場を提供しています。横浜市内10 区で展開する知的障害の方の障害者支援施設では、利用者さんが社会活動に参加しやすいよう、地域コミュニティに根ざした自立支援援助なども積極的に行っています。
画像引用元:社会福祉法人ル・プリ(https://le-pli.jp/)
実際に障害福祉施設で働くベテランスタッフの方に、夜勤の内容や仕事の心得について詳しくお話を聞きました。インタビューに答えてくださったのは、2018年5月ル・プリに入社した、「青葉メゾン」の竹之内郁哉さんです。
出勤後は、利用者さんの内服薬や入浴、食事、洗濯物の取り込み、居室の戸締りなど、日中活動から戻ってくる利用者さんを受け入れる準備をします。同時にスタッフと打合せを行い、日中活動先での様子や出来事を引き継いでもらいます。
利用者さんが戻ってきたら表情の観察や体温の測定を行い、体調に変わりはないか確認した上で入浴や食事、服薬、排泄、家事などの支援を一人ひとりに行います。消灯後は記録をまとめつつ、居室を巡回して異常がないかをチェックします。必要に応じて体位交換やトイレ誘導も行います。
起床後は更衣や洗顔、髭剃りなどのほか、前日と同じように食事、服薬、排泄、家事などを支援します。日勤スタッフが出勤してきたら引き継ぎを行い、利用者さんを日中活動先に送り出します。その後フロアの整理整頓や片付け、記録などを終えたら退勤の時間です。
薬のチェックや入浴、ご飯(炊飯)準備、洗濯物の取り込みや居室の戸締りなど、日中活動(生活介護)から戻ってくる利用者さんを受け入れるための準備を行います。
日中活動先(生活介護)での出来事や利用者さんの様子などの引継ぎを行います。
日中活動(生活介護)から戻ってきた利用者さんの受け入れを行います。体調に変化はないか表情を観察したり、体温を測ったりします。
1ユニット5名の利用者さんの入浴介助を行います。利用者さん一人ひとりに合わせて必要な介助を行います。また、ボディチェックを行い身体に異常がないか確認します。
夕食の配膳や利用者さん一人ひとりに合わせて必要な介助を行います。食事が終わったら服薬の介助を行います。
歯磨き、洗濯物干し、翌日の準備などの介助を行います。
眠前薬の服薬の介助を行います。就寝のために各居室へ利用者さんを誘導します。
共有スペースの電気を消灯します。利用者さんの1日の様子を記録に記入します。
利用者さんが就寝できているか、何か異常はないかを確認します。必要な方は体位交換やトイレ誘導を行います。(1回目の巡回)
2回目の巡回を行います。
居室を訪問し利用者さんに声を掛けて起床を促します。更衣や洗顔など利用者さん一人ひとりに合わせて介助を行います。
夕食の配膳や利用者さん一人ひとりに合わせて必要な介助を行います。食事が終わったら服薬の介助を行います。
歯磨きや身支度を整える介助を行います。
日勤担当者へ、前日から今朝までの利用者さんの様子の引継ぎを行います。
利用者さんの送り出しを行います。記録の記入や共有スペース、居室などの生活棟内の整理整頓、片づけなどを行い退勤します。
実際に障害者施設で生活支援員を務めるベテランスタッフ・竹之内郁哉さんに、夜勤の仕事で大切な10のことを伺いました。
日中活動から戻ってくる利用者さんを受け入れるために、薬のチェックや入浴、食事の準備、洗濯物の取り込みや居室の戸締りなどを行います。入浴も食事も家事も利用者さん一人ひとり異なるペースがあるため、個性に合わせて丁寧に支援することが大切です。また、利用者さんと良好な関係を築くには、何よりいつもそばにいて一緒に過ごすことが一番です。利用者さんは、日中の仕事を終えて戻ってきているので、疲れが取れてリフレッシュできるような余暇活動を提供できるのが理想的です。
注意したいことは、情緒面や行動面、健康面を細かく観察して変化に気づくことです。どんなに些細な出来事の中にも、利用者さんの変化の兆しが隠れているかもしれませんので、小さな気づきでも、しっかり記録に残して報告することを心がけています。特に夜間の巡回時は、いつもと変わりないように見えても油断は禁物。細部まで確実に、丁寧に利用者さんの様子をチェックします。
夜勤は1人で行うため、自分以外に頼る人がいません。何かあっても決して慌てず、平常心を心がけて物事に対応することが重要です。「何が起こるかわからない」ことを肝に銘じ、さまざまな緊急事態を想定していざというときに対応できるよう備えています。そして次の朝、日勤スタッフに利用者さんの様子や出来事を引き継いで退勤となります。日勤スタッフへの共有も、利用者さんの変化を見落とさず、些細なことまでしっかり伝えることを意識しています。
入社半年目‥業務にも慣れてきて、少しずつ利用者さんと関係性を築くことができはじめ仕事が楽しいと感じた。
入社2年目‥後輩が入社してきて、業務や利用者さんについて聞かれたり、教えることで責任感が増した。
入社5年目‥フロアチーフとなり、利用者さんの支援とともにフロアの運営についても意識するようになった。
この仕事を通じて嬉しいと感じることは、利用者さんの楽しそうな表情や様子を垣間見ることができる時です。利用者さんによっては、言葉で自分の喜怒哀楽を表現することが難しい方がいます。
そのため、利用者さんの表情や様子、態度で利用者さんの気持ちを読み取ることが大部分ですが、やはり誰かが笑顔になる、笑って楽しそうにしているのを見るのがとても嬉しい気持ちになります。
利用者さんとのコミュニケーションで印象的なことは、利用者さんは他利用者さんや職員を含めて周囲の人の感情に敏感であることです。他の利用者さんが落ち着かなくて怒りの感情を表すと周りの利用者さんも落ち着かなくなり怒りの感情を表に出すことがあります。
逆に楽しい雰囲気を作ると自然と利用者さんも笑顔になることがあります。コミュニケーションを取る際は、利用者さんの気持ちに寄り添うことがとても大切であると感じています。
福祉の魅力は人との関わりだと思います。人と関わり触れ合うことで互いに笑顔が生まれます。対人関係の仕事なので、楽しいことや笑顔だけではなく辛いことや苦しいことなど壁にぶつかる時もありますが、「どうしたら上手くいくのか」を皆で悩み、考えて乗り越えることで達成感ややりがいを感じることができます。それが自分自身の成長にも繋がります。
障害者施設には必ず夜勤があります。中にも夜勤専従、常日勤という働き方もありますが、多くのスタッフは柔軟な勤務体制に応じる必要があります。時間帯によって支援内容も異なるため、それぞれの仕事も覚えなければなりません。
そこで気をつけたいのは自分の体調管理です。夜勤帯は1人で現場を任せられることが多く、他に頼れるスタッフがいないので体調を万全にしておく必要があります。そして夜間は身体の活動リズムが日中とは逆になります。夜勤帯に睡魔に襲われることがないように身体のリズムを整えておくこと、これも障害者施設で働く際に求められる心構えのひとつです。
横浜市の福祉業界へ就職を考えている新卒就活生のためのメディア「ラ・レトル」は、現職社員の声を集めた就職者向けポータルサイト「VOiCE」を運営するZenken株式会社が制作・運用しています。「福祉」という、クリエイティブで奥深い業界の魅力をぜひ知ってもらえることを願います。